お布団のダニ対策として、布団乾燥機や掃除機がけに加えて、定期的な天日干しもダニ対策の一環として行われます。 この「天日干し」は、お布団内部の湿気を取ることで、ダニが生息しにくい環境にすることを目的に行うのですが、それと同時に「生きているダニ」も退治できると誤解されがちです。 そこで、「生きているダニ」に対して、「天日干し」がダニ退治に効果があるのかを、冬と夏の晴れた日に実際にお布団の天日干しを実施して、実験的に検証しました。

実験日と天気

●2017年3月8日(冬)
天気:晴れ
温度(最高/最低):9.1℃/1.5℃
湿度(平均):43.0%

●2017年8月31日(夏)
天気:晴れ
温度(最高/最低):31.0℃/24.0℃
湿度(平均):30.0%

実験手順

⑴ 布団の表面と裏面※1に、天日干しを実施している間の温湿度の推移を測定するために、ロガー(温湿度計測器; KNラボラトリーズ)を設置した (図1)。
※1表面:日光の当たる面、裏面:日光の当たらない面

図1. 温湿度計測器(ロガー)

アレルギー性結膜炎について

⑵ 生きたダニを封入した試験装置※2を敷布団の表面 (日光の当たる面)、内部 (中綿と中芯の間)、裏面 (日光の当たらない面) の3ヶ所に、それぞれ3検体ずつ設置した(図2)。
※2ダニ試験装置: ポアサイズ53 µmのメンブレンフィルター(ダニは通過できない素材)にヤケヒョウヒダニ30匹程度を封入して,逃亡防止を講じた実験装置。

図2. ダニの設置場所

⑶ 敷布団を日光の当たる場所で4時間 (AM 11:00からPM 15:00までの間) 天日干しを行う。

⑷ 天日干し終了後,設置したダニ試験装置とロガーを回収して,生きているダニ数を実体顕微鏡下でカウントし生存率をもとめた。また,ロガーで計測した温湿度推移データをパソコンに読み込んだ。

実験結果

① 冬の実験結果

ダニの死滅温度は「50℃で20分以上」とされています。また、ダニは乾燥に非常に弱い生物です。 冬の日中の晴れた日に「天日干し」をしても、温度は、表面では平均12℃、裏面で平均15 ℃と、表面・裏面ともに死滅温度には達しません (図3)。
湿度については、表面・裏面ともに湿度30 %RH以下の低湿度環境でしたが (図3)、ダニの生存率を調べたところ、どの設置位置でも、90%以上のダニが死滅せずに生き残っていました (図4)。

図3. 冬の天日干し中における敷布団表面 【左(上)】 と裏面 【右(下)】 の温湿度推移




冬に天日干しを行っている間の敷布団表面と裏面の温湿度の推移グラフです。
表面の平均温度は12 ℃(最高: 16 ℃、最低: 10 ℃)、平均湿度は28 %RH(最高: 32 %RH、最低: 23 %RH)であった。
裏面の平均温度は15 ℃(最高: 21 ℃、最低: 12 ℃)、平均湿度は24 %RH(最高: 30 %RH、最低: 10 %RH)であった。

図4. 冬の天日干し後のダニ生存率

アレルギー性結膜炎について

②夏の実験結果

真夏の強い日差しが照りつける中での検証でしたが、表面と裏面の温度は、最高でもそれぞれ43℃と35℃までしか上がらず、ダニの死滅温度である50℃に達することはありませんでした。 一方、湿度は冬と同様に、ダニにとって好ましくない30 %RH前後の低湿度な環境でした (図5)。
ダニの生存率を調べたところ、冬の検証実験よりも生存率は低くなりましたが、それでも約80 %のダニが生存しており、完全に死滅させることはできませんでした (図6)。

図5. 夏の天日干し中における敷布団表面 【左(上)】 と裏面 【右(下)】の温湿度推移




夏に天日干しを行っている間の敷布団表面と裏面の温湿度の推移グラフです。 表面の平均温度は36 ℃(最高: 43 ℃、最低: 31 ℃)、平均湿度は28 %RH(最高: 32 %RH、最低: 23 %RH)であった。 裏面の平均温度は33 ℃(最高: 36 ℃、最低: 31 ℃)、平均湿度は32 %RH(最大: 34 %RH、最小: 29 %RH)であった。

図6. 夏の天日干し後のダニ生存率

アレルギー性結膜炎について

まとめ

今回、お布団の「天日干し」が、生きているダニを退治できるのかについて調べてみました。 冬と夏ともに、「天日干し」後のダニの生存率は高く、ダニ退治に効果はみられませんでした。 「天日干し」しても、ダニの死滅温度の50 ℃に達することはなく、また、湿度は、冬・夏ともに30 %RH前後の低湿度環境でしたが、4時間程度の短時間では、ダニの生存に影響はみられませんでした。

今回のように、1日だけの天日干しでは、お布団内部の殺ダニ効果は期待できないようです。長期間、それも連続して毎日、天日干しをすれば殺ダニ効果が現れるかもしれませんが、現実的ではありません。 そもそも、天日干しは、お布団の湿度を下げ、ダニが生息しにくい環境にするために行います。 今回の検証実験からも、「天日干し」に高い殺ダニ効果は見られないため、短絡的に殺ダニ効果を期待するのではなく、定期的にお布団を干すことで、ダニが生息しにくい環境づくりの心がけが重要です。