一般的な掃除機掛けで、布団のダニがどれくらい吸い取れるのかを日革研究所で検証いたしました。
材 料
検証した掃除機は、「サイクロン式」「ハンディータイプ」「紙パック式」の3種類です。布団は、一般的な敷布団(シングルサイズ)を使用しました。
1. 検証対象掃除機
- サイクロン式掃除機(以下サイクロン式と記載)
- 吸込仕事率*:320 W~80 W
- 発売時期:2016 年
- ハンディータイプ掃除機(以下ハンディータイプと記載)
- 吸込仕事率*:63.4 W
- 発売時期:2009 年
- 紙パック式掃除機(以下紙パック式と記載)
- 吸込仕事率*:500 W~50 W
- 発売時期:2013 年
*吸込仕事率 (W) = 0.01666 x 風量(立方m /min)x 真空度(Pa)
真空度 = ゴミを浮き上がらせる力、風量 = 浮き上がらせたゴミを運ぶ力
2. 検証試験に用いた布団
サイズ | シングル(100×210 cm) |
---|---|
構造 | 3層式 |
側生地 | ポリエステル100% |
中綿 | ポリエステル100% |
中芯 | ポリエステル100% |
3. 供試ダニ種
・ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)
検証に⽤いたダニは、当社で累代飼育している東京女子大系のコロニー(株式会社ビア
ブルから譲渡)を⽤いた。飼育培地はMF 飼料(ラット⽤粉末飼料:オリエンタル酵母工業社製)とエビオス(乾燥酵母:アサヒフード アンド ヘルスケア社製)を当量混合し
たものを使⽤し、25℃設定としたインキュベーター内にて湿度70%程度を保障した飼育
環境にて累代飼育を行っている。
検証手順
⑴ 1枚の敷布団を各掃除機用に実験エリアを3分割
⑵ 布団の表面(A:側生地の上)と内部上層(B:側生地と中綿の間)と内部(C:中綿と中芯の間)に、ダニ培地(生きたダニ5,000匹※1)を播種
※1布団の表面(A:側生地の上)は生きたダニを1,000匹播種
⑶ 布団表面を各掃除機で「2分間/強」で吸引
⑷ 上記⑴~⑶を計5回繰り返す※2
※2布団の表面(A:側生地の上)は計3回繰り返し
⑸ 紙パックあるいはダストボックスを洗い、捕獲したダニを単離(飽和食塩水浮遊法)
⑹ 掃除機で何匹吸引できたかを実体顕微鏡で目視にてカウント
検証結果
各掃除機による吸引された生きているチリダニ匹数をまとめたものを①に、それをもとに求めた吸引捕獲率を②に示す。また、表面・内部上層・内部間における吸引捕獲率を比較したグラフを③に示す。
① 各掃除機による吸引した生きているダニ匹数
※ND:No Date(未計測)② 各掃除機による吸引捕獲率
③ 播種領域間における吸引捕獲率の比較
考察
「サイクロン式掃除機」、「ハンディータイプ掃除機」及び「紙パック式掃除機」を用いて、敷布団表⾯・内部上層・内部に播種した生きているダニの吸引効果検証を行った。 その結果、表面の場合は、サイクロン式は77.3 %、ハンディータイプは41.2 %、紙パック式は60.9 %の吸引捕獲率を示し、生きているダニに対する⼀定の捕獲効果が観察された。 しかしながら、内部上層・内部については、いずれの掃除機においても吸引捕獲率は1 %以下であり、生きているダニの捕獲効果は著しく低かった。 このことから、掃除機の形式に関わらず、敷布団内部から生きているダニを吸引することは非常に困難であることが示唆され、実環境においても、 敷布団内部に生息しているダニを掃除機によって吸引捕獲することは期待できないと推察される。