ダニは、私たち人間が生活する上で代表的な害虫の一つです。

現在、国民の2人に1人が何らかのアレルギーを持っており、そのアレルギーにダニも深く関わっています。また、ダニに刺されて「かゆい」などの症状を訴える人も多いと思います。

そのため、今やお住まいのダニ対策は必須なのです。

では、屋内に潜むダニに人が打ち勝つにはどうすればいいのでしょうか?

まず、第1に「ダニを知る」ことが重要です。相手の性質や特徴を知ることで、無駄なく効果的に対策を打つことができます。 特に、家屋環境は家庭ごとで異なるため、ご自身の家庭環境にあった対策することが望まれます。

第2に「対策の目的や効果を知る」ことも重要です。それぞれのダニ対策に、得意/不得意があり、それをすることで何が改善させるのかを知っておくことは重要です。 また、ダニ対策に最も重要なことが「継続」であり、ご自身のライフスタイルに合った継続できるダニ対策を行うことが大事です。

そこで、ダニの被害から家族を守るために、ダニの生態や退治方法などについての正しい知識を日革研究所がお伝えしようと思います。

1. ダニを知る

1-1 ダニとは

そもそもダニとはどんな生き物なのでしょうか?

分類学上、ダニは「蛛形類(蜘蛛綱)」という蜘蛛のグループに属します。

世界では数万種類のダニが確認されていますが、日本では約2000種類存在し、一般家庭で最も身近な「ヒョウヒダニ類(チリダニ類)」や、 吸血時に感染症を引き起こす可能性のある「マダニ類」などが有名です。

その他、屋内でのダニ刺されの原因である「ツメダニ類」、欧米や東南アジアでの食料汚染を引き起こす「コナダニ類」「ニクダニ類」、 農業害虫である「ハダニ類」など様々な種類のダニが存在します。

また、水中で生息する「ミズダニ」をはじめ、北極などの極寒の地でもその存在が確認されており、地球上のあらゆる場所で生息しています。

そんなどこにでもいるダニですが、人の生活に「負の影響」をもたらすダニに注目してしまい、「ダニ=害虫」というイメージになりがちですが、実は、90%のダニは無害とされています。

このように、「ダニ」といっても、非常にたくさんの種類が存在するため、本項では屋内に生息する「ダニ」、特に「チリダニ類」や「ツメダニ類」を中心にお伝えいたします。

1-2 なぜダニが発生するのか

基本的にダニは「突然」発生するわけではなく、見えていないだけで、以前からそこに存在しているのです。
つまり、多くのケースでは、快適な繁殖環境が整い、ダニが繁殖してある程度個体数が増えて、「ダニの集団」や「健康被害」という形でようやく「ダニの発生」に気がつきます。

では、こうしたダニの発生や繁殖に重要なものは何なのでしょうか?

それは「温度」「湿度」「エサ」といった環境条件が重要になります。

屋外環境においては、温暖化という特殊な環境要因もありますが、基本的にはその地域における環境条件が大きく変わることはありません。

ダニにとって最も関係のある屋内という狭い空間は、文明の発達により、人にとって非常に快適な環境を簡単に実現できるようになりました。 温度調整器具としてはオイルヒーターやエアコン、今では床下暖房などがあります。また、湿度調整器具としては、加湿器なども非常に普及しています。

こうした環境設備の進化や普及により、年中快適な(一定)の環境を維持できるようになったため、人が快適な環境を好む屋内ダニも非常に快適に過ごせるようになりました。

特に、「25~30℃、70%Rh前後」の環境を好むチリダニは、日本の家屋環境において最も多いダニ(優占種)となっています。

1-3 生態について

ダニ類(蛛形類)は昆虫ではありません。分類学上、昆虫は節足動物門の「六脚亜門」に属し、ダニはクモやサソリが属す「鋏角亜門」となります。

実は、「昆虫」にも定義があり、

1. 頭部・胸部・腹部に体が区分できる
2. 胸部に3対の肢がある

とされています(もちろん例外も存在します)。

一方で、ダニの体構造の特徴としては、前体部(頭部)と後体部(胴体部)の2つに分かれていたり(明確に判断できる種が少ないですが・・・)、鋏角と触肢をもつ顎体部が前体部に存在します。 その他、気門(気管)の場所やその有無でダニの種類が区別されることもあります。

興味深いことに、食性に応じて鋏角の形が異なっています。刺したり咬んだりするダニは鋏角が突き刺したりせん断するのに適した形を、 刺したり咬んだりしないダニは鋏角が掴んだり潰したりするのに適した形をとってます。

食性については、人皮膚の剥離物やカビなどハウスダストを食す「チリダニ」や、食品粉や作物なども食す「コナダニ」、植物や菌類を食す「ササラダニ」、 他の昆虫やダニの体液を食す「ツメダニ」、動物寄生性の「マダニ」や「イエダニ」、人の肌に寄生している「ニキビダニ」など多種多様です。

ダニの生育ステージについては、「卵 / 幼虫 / 若虫 / 成虫」に分かれています。また、この若虫も数ステージに分かれていたりします。

ライフサイクル1 図.ヤケヒョウヒダニの生育ステージ

例えば、「チリダニ」に関しては、「卵→幼虫→前若虫→後若虫→成虫」に分かれており、同じチリダニ類でも「コナヒョウヒダニ」と「ヤケヒョウヒダニ」とではそのステージの長さ(期間)が異なります。

ライフサイクル2 図.各種チリダニのライフサイクル

また、コナヒョウヒダニにおいては前若虫の時に越冬できる休眠形態(長期発育休止若虫)をとることができます。

このように、様々な環境に適用した多種多様のダニが存在しており、非常に奥の深い生き物です。

1-4 繁殖について

ダニは、通常は雄が雌に精包を渡して受精する両性生殖で繁殖しますが、雄だけを作る雌産生殖と雌だけを作る雄産生殖の単為生殖を行う種類も存在します。 卵/幼体を産んだり、1回あたりの産卵数なども種類によって異なります。

このように、ダニ種によって多種多様の繁殖様式を持ちますが、「チリダニ」はどのような仕組みを持っているのでしょうか?

チリダニは両性生殖で繁殖します。しかし、雄から雌に精包を渡すと、雌はその精包を貯蔵できる器官を持っており、一度受け渡しが終わると、生殖行為なしに繁殖できます。

ヒョウヒダニ交尾 図.交尾しているヤケヒョウヒダニ

また、コナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニの間でも違いがあり、基本的にヤケヒョウヒダニの方が生涯産卵数が多くなります。

繁殖に最適な環境条件としては、コナヒョウヒダニの方がより低湿度でも繁殖できるため、比較的乾燥した家屋では「コナヒョウヒダニ」が繁殖し、 湿潤な家屋では「ヤケヒョウヒダニ」が繁殖していると考えられます。

そのため、以前の日本ではチリダニの中でも「ヤケヒョウヒダニ」が優占種とされていましたが、最近では「コナヒョウヒダニ」が優占種となっているようです。

2. ダニの種類

2-1 家の中に潜んでいる屋内ダニの種類

2-1-1 ヒョウヒダニ

コナヒョウヒダニ 図.コナヒョウヒダニ

ヤケヒョウヒダニ 図.ヤケヒョウヒダニ

家屋内に生息するダニの代表格です。
日本では、「コナヒョウヒダニ(学名Dermatophagoides farinae)」と「ヤケヒョウヒダニ(学名Dermatophagoides pteronyssinus)」が主なヒョウヒダニですが、 世界では「シワチリダニ(学名Euroglyphus maynei)」なども有名な種類です。

コナヒョウヒダニとヤケヒョウヒダニの見た目は非常に酷似しているものの、比較的低い湿度でも繁殖できるのは「コナヒョウヒダニ」というような「繁殖条件」などに違いが認められます。

体長は成虫で0.4mm程度で、乳白色の個体です。日本の家屋で生息するダニの70〜90%程度を占める優占種です。

一般的に、チリダニは春の暖かくなる時期からその数を増やし、夏の7~8月にかけて最も数が多くなります。昨今は、空調設備や加湿器具等の普及により年中繁殖している可能性があります。

チリダニが原因の健康被害は「アレルギー性疾患」で、「(小児)喘息」「アトピー性皮膚炎」「アレルギー性鼻炎」「アレルギー性結膜炎」です。 アレルギーを引き起こす原因となる物質(アレルゲン)はダニの糞や死骸です。

また、開封済みのお好み焼き粉に侵入し、内部で繁殖後、そのお好み焼きを食べることで「ダニ経口アナフィラキシーショック」が起こります。

余談ですが、コナヒョウヒダニは「American house dust mite」、「ヤケヒョウヒダニ」は「Europian house dust mite」という別名があります。

2-1-2 ツメダニ

ミナミツメダニ 図.ミナミツメダニ

家屋内に生息するダニの代表格です。

日本では、「ミナミツメダニ(学名 Chelacaropsis moorei)」や「フトツメダニ(学名 Cheyletus fortis)」などが発見されます。

体長が0.5mm程度で、淡黄色の個体です。畳でよく発見されていましたが、近代化に伴った畳の減少により以前より発見されなくなりましたが、 現在では布団やじゅうたん、ソファといった場所でもよく発見されています。

一般的に、チリダニの最も多い時期が7~8月である一方、ツメダニは8~9月が最も多くなる傾向にあります。

主なダニ被害は、ダニ刺され(ツメダニ刺咬症)を引き起こします。人に対して積極的に刺すわけではありませんが、「畳1m2に1匹いればダニ刺咬症が起こる」とも報告されています。 ダニ刺されの見分け方の一つとして、「身体が隠れている部分も刺されている」「寝ている間に刺されている」といったことが挙げられます。

2-1-3 コナダニ

ケナガコナダニ 図.ケナガコナダニ

家屋内に生息するダニで、「ケナガコナダニ(学名 Tyrophagus ptrescentiae)」などが有名な種です。

体長が0.4mm程度で、白色の個体です。チリダニよりも高湿度を好みます。現在、日本ではあまり見かけませんが、60年以上前に室内環境で問題視されていたのはコナダニと「ニクダニ」でした。 また、昔は畳でよく検出され、コナダニが増えると、そのコナダニを捕食するツメダニが増えるとしても問題視されていました。

特に、ダニ刺されの問題はありませんが、コナダニとニクダニが穀物倉庫などで大量発生することがあるため、貯蔵庫ダニ(Strage mites)と呼ばれています。
しかし、海外の地域によっては、チリダニ以上にコナダニやニクダニが環境アレルゲンとなることがあり、これらのダニが原因でアレルギー性疾患が発症する例も報告されています。

2-1-4 ニクダニ

サヤアシニクダニ 図.サヤアシニクダニ

家屋内に生息するダニで、日本では「サヤアシニクダニ(学名 Glycyphagus destructor)」や「イエニクダニ(学名 Glycyphagus domesticus)」などが有名な種です。

体長が0.4m程度で、白色の個体です。チリダニよりも高湿度を好みます。現在、日本ではあまり見かけませんが、60年以上前に室内環境で問題視されていたのはコナダニと「ニクダニ」でした。

最近では、冬に「ダニが繁殖して・・・」というお問い合わせがあります。その場合、「ニクダニ類(恐らく、低温(10~15℃)を好むイエニクダニ)」ではないかと思われます。

特に、ダニ刺されの問題はありませんが、コナダニとニクダニが穀物倉庫などで大量発生することがあるため、貯蔵庫ダニ(Strage mites)と呼ばれています。
しかし、海外の地域によっては、チリダニ以上にコナダニと「ニクダニ」が環境アレルゲンとなることがあり、コナダニと「ニクダニ」が原因でアレルギー性疾患が発症する例も報告されています。

2-2 家の外から入ってくる屋外ダニの種類

2-2-1 マダニ

屋外で生息し、シカやイノシシなどに寄生しています。ダニの呼び方について、マダニ類(大型のダニで吸血性を示す)を「Tick」と呼び、それ以外を「Mite」と呼びます。 その呼び名の通り、3~4mm程度の大きさで、吸血後の雌は約1㎝まで大きくなります。

マダニは野生動物が多くいる山や森林だけでなく、草原や畑にも生息します。また、人だけでなくペット、特に犬は散歩の際に寄生されることがあり、注意する必要があります。

マダニで怖いのが感染症です。刺咬・吸血の際に唾液を介して、ウイルスや細菌などが人に伝播されます。 マダニを媒介した感染症には、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)や日本紅斑熱、ツツガムシ病などがあります。 SFTSは2012年後半に初めて見つかった比較的最近の感染症で、日本では毎年50~100人程度が感染し、10~30%と非常に高い致死率を持っています。

2-2-2 イエダニ

屋外に生息するダニ種ですが、稀に屋外からイエダニに寄生されたネズミが屋内に侵入し、屋内でもイエダニによる健康被害が起こることがあります。

マダニとは異なり、イエダニに吸血されることで重大な感染症が起こる報告は日本で見かけられませんが、皮膚炎が発症します。

昔よりも住宅設備や衛生環境が良くなり、家におけるネズミ生息率の減少に応じて、イエダニによる健康被害も少なくなりました。 ところが、都市部では、飲食店やコンビニエンスストアが増加し、その大量の廃棄食品等をエサにするネズミが増加したようです。 また、都市部は年中暖かいため、繁殖も適しており、ネズミが大量に増えてしまい、それに応じて、イエダニによる皮膚炎被害も増加しているようです。

2-3 日常生活で注意すべきダニ

日常生活で注意すべきダニは、やはり「チリダニ」です。

日本の屋内環境の優占種であり、日本のアレルギー性疾患に大きく寄与しているためです。

近年、人口の約半数が何らかのアレルギー性疾患を持っていることが、厚生労働省より報告されています。

特に、子供のアレルギー性疾患に「チリダニ(ダニアレルゲン)」が関与しており、「アレルギー性鼻炎」や「小児喘息」を患っている子供においてダニアレルゲンに対する感作率は 60~80%と非常に高い数値を示します。言い換えると、こうしたアレルギー性疾患を持つ子供の60~80%が「ダニアレルゲン」を吸入すると症状に悩まされることを示しています。

ダニアレルゲンとアレルギー性疾患 図. ダニアレルゲンとアレルギー性疾患

では、「チリダニ」対策で重要なことは何でしょうか?

ダニに対してアレルギー反応を示さない人も、ダニでアレルギー性疾患が発症する人も、

1. ダニアレルゲン(糞や死骸)と接触しないようにする(≒アレルゲンを除去する)
2. ダニアレルゲンの生産元である生きたダニを無くす

が予防に重要で、そのため、常日頃のダニ対策が大切です。

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3. ダニが人間やペットに与える影響

3-1 かゆみ(ダニ刺され)

「ダニ刺され」をもたらすのはミナミツメダニなどの「ツメダニ類」です。また、ツメダニ によるダニ刺されは人だけでなく、ペットにもその被害が及びます。

ツメダニの主な生息環境について以前は畳でしたが、寝具やじゅうたん、ソファでも生息しています。

ツメダニがヒトを積極的に刺すことはありませんが、ツメダニの生息数が多くなると刺される可能性が高くなるため、ツメダニだけでなくツメダニのエサとなるチリダニなどの対策も重要です。

ツメダニによるダニ刺されは吸血性ではなく刺咬性の被害です。刺咬時に注入される唾液腺の物質が抗原となり、遅延型のアレルギー反応を示すと考えられています。 症状として、ツメダニに刺されてから、1日程度で激しいかゆみを伴った赤みを帯びた腫れ(丘疹)が見られ、その緩和には1~2週間程度かかります。

そのかゆみや発疹がダニ刺されかを特定することは非常に難しいとされています。ただ、服に隠れた部分でもこうした発疹がみられた場合、ダニ刺されを疑いましょう。 もし、ツメダニによるものかを特定したい場合は、そのお部屋や寝具やじゅうたんなどから回収した室内塵を集めて、専門の機関にてツメダニがいるかを確認してもらいましょう。

3-2 アレルギー性疾患 その1(アトピー素因とアレルギーマーチ)

遺伝的にアレルギーになりやすい素質を「アトピー素因」といい、このアトピー素因を持つ乳児において年齢が上がるごとに様々なアレルギー性疾患が順に発症していく 様子を示したものを「アレルギーマーチ」と言います。

アレルギーマーチ 図.アレルギーマーチ

これによると、
アトピー性皮膚炎や食物アレルギー → 気管支喘息 → アレルギー性鼻炎・結膜炎
の順に有症するとされています。しかしながら、全ての人が当てはまるわけではありませんが、こうした経過を辿ることが多いようです。

また、乳児期において陽性率の高いアレルゲンに「ダニ」は含まれていないものの、幼児期以降の世代において「ダニ」が含まれています。

つまり、乳児期から予防することで、幼児期や学童期にダニアレルギーを持たない(感作しない)ようにすることが重要なのです。

3-3 アレルギー性疾患 その2(喘息、鼻炎、結膜炎)

喘息(小児喘息) / アレルギー性鼻炎 / アレルギー性結膜炎は、アレルギーの分類においてはI型の即時反応で、ハウスダストや花粉、カビなどが原因となります。

小児喘息は80%以上が乳幼児期に発症し、3歳までにその60%が、6歳までに90%が発症します。 しかしながら、小児喘息においては、病気による症状は好転またはほぼ消失するとされており、臨床的にコントロールされるまで回復する率が高いアレルギー性疾患です。

喘息に関係する環境因子として「発病因子」「増悪因子」があります。発病因子には、ダニなどのアレルゲン、ウイルス性呼吸器疾患、大気汚染などのその他の因子があります。 一方、増悪因子には、ダニなどのアレルゲンをはじめとして、喫煙、ストレス、アルコールなど15以上の因子があげられます。

アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎は「通年性」と「季節性」があり、通年性の原因は「ダニ」が、季節性の原因は「スギ」が圧倒的に多いとされています。
罹患率は「通年性」よりも「季節性(花粉症)」の方が高くなっています。 これらの治療法としては、アレルゲンから回避したり、点眼薬や点鼻薬などの薬による「対処療法(一時的な症状の軽減)」と、アレルゲン免疫療法による「根治療法」があります。

3-4 アレルギー性疾患 その3(アトピー性皮膚炎)

アトピー性皮膚炎は皮膚疾患としては有症率の高い疾患の一つです。I型とIV型のアレルギー性疾患に該当しますが、発症機序やその病態についてはいまだ不明な点も多いとされています。 本疾患もアトピー素因が関与し、両親に本症の既往がある場合は「75%」という高い確率で子供が発症する可能性があると報告されています。

糞のダニアレルゲンに含まれるプロテアーゼというタンパク質分解酵素が皮膚のバリア機能不全を引き起こし、皮膚からの抗原の侵入を容易にするとされています。 特に、皮膚疾患特有の引っ掻くといった刺激によって、こうした機能不全が激化すると報告されています。
そのため、アトピー性皮膚炎は、引っ掻きやストレスなどアレルギーとは関係のない要因も重要視されています。

治療法においては、原因となる物質や因子を見つけて対策し、それと並行してスキンケアと薬物療法を行うことが大切です。

また、ペットである犬もアトピー性皮膚炎になります。アトピー性皮膚炎に罹患している犬もダニアレルゲンに対する陽性率が高いことから、屋内に潜むダニが深く関わっていそうです。

4. ダニに刺された時の対処方法

4-1 すぐに行うべき処法

ダニ刺されにおいては、市販のかゆみ止めを使用するか、それでも我慢できないような症状がひどい場合には、抗ヒスタミン剤やステロイドの内服薬が必要となるので、 皮膚科専門医に受診することをお勧めします。

ただ、治療薬で症状を緩和しても、その環境からツメダニを無くさない限りダニ刺され今後も続く可能性があり、本的な解決にはツメダニを除去することが重要です。

チリダニ以上に、ツメダニも薬剤に対する抵抗性が高く、寝具といった立体的で潜り込むような場所や畳やじゅうたんなどの表面に加えて裏面があるような場所においては、 より薬剤効果の発現は難しくなります。

薬剤以外の方法としては、屋内ダニはある程度共通して「高温」「高湿」「エサ」が重要です。そのため、高温処理や乾燥処理、エサを無くすことでも、 ツメダニの繁殖抑制や退治につなげることが可能です。ツメダニのエサの一つがチリダニでもあるので、チリダニ対策を行うことがツメダニ対策につながります。

ただ、こうした方法においても、家具の大きさや形状、材質によっては実施困難な対策方法があるため、実施場所に応じた方法で、 かつ自分のライフスタイルに合った方法で継続して対策することが重要です。

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4-2 刺された跡を消すには?

ダニに関わらず、虫に刺された後にかゆみ症状が無くなったとしても、その刺された場所に茶色い跡が残る場合があります。

この原因は「メラニン」です。通常、メラニンは皮膚に対する紫外線の影響を抑えるため作られています(良い機能)。 しかし、虫刺されや火傷などによって皮膚が傷つけられ、メラニンを合成するメラノサイト(細胞の1種)が刺激されることで、メラニンが過剰に生成されてしまい、 それが表層に沈着することで、刺され跡として出現します。

一般的に、こうした跡は正常な修復機能の結果として起こるものであり、また、皮膚のターンオーバーにより古い肌は新しい肌に変わるため、時間がたつと自然に無くなっていきます。

ただ、完全に無くなるまでに数か月必要なこともあり、すぐに改善したい場合はどうすればいいのでしょうか?

まずは、医療機関で受診し、自分の症状にあった治療法や自分のライフスタイルに合った治療法を紹介してもらいましょう。

受診以外の方法としては、L-システインやビタミンC誘導体、ビタミンE、コエンザイムQ10はメラニン生成を抑制したり、 皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)を促進させる効果があるので、こうした成分を含む市販薬やサプリメントで改善を目指すことになります。

5. 一般的なダニ対策方法

基本的にダニ対策として意味がない掃除方法はあまりありません。

ただ、ご自宅の環境や家財の素材や大きさによっては効果が出にくかったり、対策できなかったりという課題があります。 また、同じ種類の商品であっても性能が異なるため、簡単に判断できません。

そのため、各対策方法の目的や効果、得手/不得手を理解した上で、自分のライフスタイルに合ったダニ対策(を組み合わせて実施)を継続的に実施することが非常に重要です。

5-1 掃除機

掃除機を用いたダニ対策とは、「ダニアレルゲンを除去」することが主な内容ですが、ダニのエサを無くすことでダニの繁殖を抑制することもできます。 そのため、掃除機によるダニ対策で重要なのは、「パワー」です。パワーが強ければ強いほど、ダニアレルゲンやエサを除去できる量も多くなります。

そのため、ダニ対策としては、小型ものやパワーが弱いものを使用するより、パワーのある掃除機を使用しましょう。 また、お布団に対応した掃除機ヘッドの使用も効果的とされています。こうした掃除機ヘッドは、床面に使用した掃除機ヘッドをお布団に使用するのが嫌という方にも便利なアイテムです。

ただ、掃除機では表面の生きたダニをある程度吸引することができても、布団内部に潜む生きたダニは吸引できないことがわかっています。詳細は下記の記事を参照ください。

【参考記事】
>>一般掃除機による布団内部の生きているダニ吸引可否検証

5-2 洗濯機

洗濯機によるダニ対策は、「ダニアレルゲンを除去」することが主な内容です。ちなみに、一般的な洗濯ではダニは死なないと報告されています。
アレルギー性疾患に深く関係する糞のダニアレルゲンは水に溶ける性質があり、洗濯することで水に溶けて除去することが可能です。 また、水に溶けないものの、死骸についてもある程度は除去できるようです。
ただし、家庭用洗濯機であれば庫内容量も限られるため、ダニが多いとされる寝具やじゅうたんでは使用できないことが多いのが弱点です。

5-3 乾燥機 (布団乾燥機)

乾燥機や布団乾燥機によるダニ対策は、熱や乾燥で「生きたダニを殺す」ことが目的です。ただし、殺すことができても残った死骸を除去することはできません。

洗濯機の乾燥機能では、乾燥温度が低いとされるヒートポンプ式でも約60℃まで昇温するので、高いダニ退治効果が見込まれます。 ただ、洗濯機と同様に容量制限があり、また加熱による素材変性には注意ください。

一方で、布団乾燥機では、布団内部の温度を何度まで上昇できるのか?さらに、布団全体をカバーできるのか?が重要な機能になります。
たとえば、布団乾燥機で、60℃で10分以上隅々まで温める機能の機種であれば高いダニ退治効果が見込まれます。 一方で、40℃や50℃程度であれば数時間は耐えるダニ個体がいたり、その昇温効果が全体に行き渡らないようであれば温度の低いところに逃げるため注意が必要です。

ダニの高温処理による死滅効果に関する内容は以下の記事を参照ください。
【参考記事】
>>ダニの高温抵抗性の検証

5-4 除湿器

除湿器によるダニ対策は、「低湿度によるダニの繁殖抑制」を目的に実施します。
しかしながら、一般的な除湿器ではお部屋全体を調湿できても、布団内部の湿気やじゅうたん裏や畳裏までは調湿するのは困難です。 そのため、除湿器による調湿効果としては、ダニの繁殖速度を遅くする程度であると考えておくと良いでしょう。

5-5 まとめ

このように、電化製品一つとっても性能差や機能性が異なり、ダニ対策効果は製品の主な効果ではないので、ダニ対策はこれをすれば大丈夫!ということではありません。
ただ、こうした機能を活用し、ご自身のライフスタイルに合った継続できるダニ対策スタイルを見つけてください。

6. 場所別ダニの予防方法

布団やじゅうたんとダ お布団内部(左)やじゅうたん(右)に潜むダニ

6-1 布団

寝具類は特に温湿度が上がりやすく、1日の1/3を寝具で過ごすためフケや皮脂がエサとなり、人の体温や発汗などで湿度や温度も高くなるため、非常にダニが繁殖しやすい環境です。
そのため、こういったダニが繁殖しやすい条件をなくすことが大切です。
湿気対策としては、掛け布団を掛けっぱなしにしない、寝室の窓を開ける、天日干しするなどで、溜まった湿気を開放しましょう。 また、掃除機掛けでエサとなるフケや垢、ダニアレルゲンを除去しましょう。その際、布団用の掃除機ヘッドを使うと効果的です。
防ダニ布団や防ダニシーツなども効果的ですが、最近は色々な種類があるので、アレルギー専門医にアドバイスをもらうことをお勧めします。

6-2 マットレス

洋式ベッドで使用される大型のマットレスは内部に空間が多く、湿度が溜まりにくいため、敷布団と比べてダニが繁殖しにくいと言われています。
大型マットレスを選ぶ際は、マットレス本体だけでなく、それを設置するベッドの構造も重要で、そのマットレス設置面が全て木材で覆われているよりも、 簀子(すのこ)のように間隙がある方が通気性が良く、湿気も溜まりにくいとされています。
また、使い方によっては、表面などにフケなどのエサが溜まるので、掃除機掛けで定期的に除去することをお勧めします。
敷布団の下に敷くような薄型のマットレスについては、敷きっぱなしにするのではなく、敷布団と同様に溜まった湿気を解放してあげましょう。

6-3 カーペット

よく過ごすお部屋のカーペットはエサや湿気が溜まりやすく、生きたダニの対策が非常に難しい場所です。
一般的な対策方法は掃除機掛けです。ダニアレルゲンを除去しましょう。
また、生きたダニのエサ(人の皮膚剥離物や食べこぼしなど)も除去できるので、ダニの繁殖抑制にもつながります。 湿気についてはカーペットの大きさや設置状況によっては天日干し等はできないので、換気等でお部屋全体を調湿し、カーペットの湿度も低下させましょう。
カーペットのダニ対策は非常に限られるので、掃除機掛けを工夫しましょう。一定方向のパイル目に逆らうように繰り返し掃除機をかけます(1m2で30秒が目安です)。 「回転ブラシつき掃除機ヘッド」を使用したり、 アレルゲンの飛散や曝露に注意する必要がありますが、「たたき」との併用も効果があるとされています。

6-4 畳

畳のダニ対策は、畳の目に沿って1畳30秒を目安にしっかりと掃除機掛けをします。また、固く絞った雑巾でよく拭きましょう。
その後、壁に立てかけて、乾燥することも重要です。
畳は裏面の方が湿気が溜まりやすいため、表面よりも裏面の方がダニが多いという報告もあります。そのため、裏面も清潔に保つためにも、定期的に裏面もお手入れしましょう。

6-5 ソファ

ソファで気をつけるのは、その材質です。革製のソファは内部にダニやダニのエサが内部に侵入することが非常に少なく、あまりダニは繁殖しません。
一方で、布製のソファは食べこぼしやフケなどのエサが表面だけなく内部で溜まるため、その内部でダニが繁殖するため、ダニ対策が必要です。
ダニ対策としては、こまめな掃除機掛けや、背面や座面部分のパーツを外してたまった湿気を解放してあげましょう(天日干しも有効です)。 クッションは小型であれば、洗濯可能な素材かを確認し、洗濯するのも効果的です。

6-6 まとめ

このように、ダニ対策する場所(家財)や広さ、大きさによって実施できる対策が異なります。

今回は屋内に潜むダニの代表格でありアレルギー性疾患と深く関係するチリダニ本体、そして、アレルゲンとなる死骸や糞を対象とした一般的なお掃除でのダニ対策について述べました。
しかしながら、ダニ刺されの原因となるツメダニに対する対策も同様です。ツメダニ対策も生息しづらい環境を作る(間接的対策)か、直接退治する必要があります。 エサとなるものが生きた虫という点がチリダニと異なりますが、チリダニを少なくすることで、ツメダニを減らすことにつながります。

このように、「ダニ対策を知る」ことで、対策方法ごとの得意/不得意を知り、無理なく続けることができる自分にあったダニ対策を見つけることが重要になります。

7. 日革研究所が推奨するダニ対策方法

アレルギー性疾患をもつことを「感作」、アレルギー性疾患をもった後にアレルギー症状が出ることを「発作」と言います。

例えば、気管支喘息の予防には一次予防 / 二次予防 / 三次予防の考え方があります。
アレルギー性疾患を持たない、つまり感作しないための「一次予防」、感作した後に発症しないための「二次予防」、発症後の増悪予防や治療といった「三次予防」があります。

ダニ対策は、特に「一次予防 / 二次予防」に深く関わっています。

また、アレルギー性疾患に強く関わっているのがダニのフンや死骸といったダニアレルゲンです。しかしながら、これらダニアレルゲンは本を正せば「生きたダニ」が原因です。

そのため、日革研究所が推奨するダニ対策は2つの目的を達成することです。

1. ダニアレルゲン(フンと死骸)を除去する
2. ダニアレルゲンの発生元やダニ刺されの原因となる生きたダニを退治する

しかしながら、色々なダニ対策がありますが、一つの対策で完全に防除するのは難しいです。
特に、ダニアレルゲンの生産元である生きたチリダニを退治することは非常に難しいとされています。
また、布団やじゅうたんなどダニは様々な場所に存在し、その生息場所によっては実施できないダニ対策もあります。加えて、ダニ対策にはそれぞれ得意・不得意な内容があります。

そのため、各場所に応じて複数のダニ対策を継続して実施することが重要です。現在の多忙とされるライフワークの中でこの「ダニ対策の継続」が難しいのが現状です。

そのため、一般的なダニ対策で「ダニアレルゲン除去」と「生きたダニが過ごしにくい環境構築」を行いつつ、 その頻度を軽くしたり生きたダニを根本的に退治するために「ダニ捕りロボ」と「ダニ捕りマット」を活用ください。

【この記事で参考にした文献や書籍】
・市橋正光. 高齢化社会を若々しく生きるためのアンチエイジング. 日本臨床皮膚科医会雑誌, 2007, 24.1: 26-31.
・厚生労働省 平成22年度 リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト
・小峰裕己. ダニ カビ完全対策ダニ カビ完全対策, 2007.
・須賀康. 皮膚科医が考えるアンチエイジング. 順天堂医学, 2006, 52.3: 429-436.
・吉川翠. 住まいとダニ. 家政学雑誌, 1986, 37.8: 723-727.

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