市販されている他社製「粘着式ダニ取りシート」を数種類準備し、それらの商品の粘着テープ部分にダニを放ち、捕獲できるかどうかの検証実験を行いました。※1
※1 実験は公平を期すために第三者機関(大阪工業大学 応用物理学部)に委託
1. 実験手順
- ①市販されている粘着系ダニ取りシートを数種類準備する
- ②商品の生地をハサミでカットし、粘着テープ部分を露出させる
- ③粘着テープの上にダニを散布する
- ④実体顕微鏡で観察し、録画する
2. 結果
ダニが粘着剤の上を歩く
匂いでおびき寄せたダニが捕獲(くっつく)されることなく、歩くことも可能となっているのがわかります。※2
よって、粘着シートの上をダニが動けることで、商品外に逃げ出す可能性が十分に考えられます。
※2 粘着シートタイプダニ捕獲器に用いられている粘着シートの粘着力及びダニ補足効果の測定(中間報告)より(大阪工業大学応用物理学部)
3. 考察
なぜダニはくっつかないのか
そもそも粘着テープはどのようにしてくっつくのでしょうか。調べてみると以下のように定義されています。
~粘着の定義~
粘着テープ(剤)に接着する仕組み「接着の一種であり、特徴として水、溶剤、熱などを使用せずに、常温で短時間、僅かな圧力を加えるだけで接着すること」
※参照:共同技研化学株式会社「粘着テープの基礎」より http://www.kgk-tape.co.jp/feature/kgkgijyutu.pdf
こちらを今回のケースで考えると、『粘着面(粘着テープ)に圧力(ダニが踏む)が加わることで接着(くっつく)する。』
つまり、ここで重要になってくるのが 「圧力(ダニの体重)」と「接触面積(ダニの足の大きさ)」ということになります。
ダニの特徴(重さと脚先の形状)
体長0.2㎜〜0.5㎜のダニの足はとても小さく、粘着部分に接触する面積も非常に小さいです。 また、ダニの体重はわずか0.001mg〜0.005mgと非常に軽い生き物です。 つまり接着面に加わる圧力は限りなく小さいと考えられます。結果、粘着シートにくっつかず、自由に歩き回れたのだと考えられます。
専門家の意見
今回、「日本接着学会」に所属されている、大阪工業大学工学部応用化学科の中村教授にダニと粘着テープの関係をお聞きしました。
ダニの質量(重さ)、手足の接触面積および接触時間から、 粘着シートを利用してダニを捕獲することは物理的に不可能です。
大阪工業大学 工学部 応用化学科
中村 吉伸 教授
逆にダニが増殖する?
粘着式ダニ取りシートの誘引剤の匂いで集まってきたダニは、 粘着テープに接着(くっつく)しなかったら、どうなってしまうのでしょうか?そこで「JIS」に基づく試験を実施したところ、 試験開始3ヶ月後には約「400倍」にも増えたという結果がでました。※3 ダニを減らす目的の商品であるのにも関わらず、逆に増やしてしまう商品だという事実がわかりました。
※3 粘着シートタイプダニ捕獲器に用いられている粘着シートの粘着力及びダニ補足効果の測定(中間報告)より(大阪工業大学応用物理学部)