1. アレルギーとは?
私たち人間には、自分の体を外敵(異物)から守る免疫システムという仕組みが備わっています。
免疫とは、「自分自身を構成している細胞の構成部分(たんぱく質など)=自己」と、「外から侵入してくる自分以外の物質(細菌やウイルスなど)=異物」を区別し、異物を排除しようとする働きのことです。
この「免疫システム」がなければ、細菌やウイルスを排除できず、私たちは生きていくことができません。
アレルギー反応と言うのは、このような本来の免疫の仕組みがうまく働かず、あるいは過剰に働きすぎて、逆に自分自身を傷つけてしまう反応のことです。
いま、自然環境や社会環境が大きく変化するなかで、この免疫システムの以上が引き起こされ、アレルギーで悩む人が増えています。
※参照 そうなんだ!アレルギー しくみと対処法を知る(新日本出版社)
2. アレルギーの主要原因は?
アレルギーの原因物質は、約8割がダニだと言われています。生きているダニそのものがアレルギーを引き起こすのではなく、ダニの死骸やフンが原因です。
微粒子化したフンや死骸は、空気中を舞っているため、吸い込むと気管支まで到達し、そこでアレルギーを引き起こします。
2-1.アレルギーを引き起こすダニ
ダニによるアレルギー性疾患において、原因となる代表格は「チリダニ類」です。 チリダニは屋内ダニの80~90%を占め、刺す(かむ)ことはありません。しかし、その死骸、脱皮殻、フンは (ダニ) アレルゲンであり、ダニが原因のアレルギー性疾患を引き起こします。
ダニアレルゲンの種類
主要なダニアレルゲンは、「Der1」「Der2」の2種類です。
Der1はダニのフン由来、Der2はダニの虫体由来のダニアレルゲンです。
- Der1
- フン由来
- Der2
- 虫体由来(生虫、死骸)
しかし以下の理由から、Der1の方が問題視されています。
- ①フンは気管に入りやすい。(大きさ:糞<虫体)
- ②虫体よりもフンの方が量が多い。(生涯500個のフンをする)
- ③フンの方がアレルギー活性が高い。(フンと虫体の分子量の違い)
室内におけるダニアレルゲンの汚染基準
ダニアレルゲンは、ダニアレルギーを引き起こす主要因であることから、各機関で室内におけるダニアレルゲンの感作、発症の基準を設けています。
WHO(世界保健機構) | |
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感作領域 |
ハウスダスト「1 g」あたりダニアレルゲン「2 µg」 [1〜2 ㎡範囲] (もしくは、ハウスダスト「1 g」あたりダニ「100匹」) |
発症領域 |
ハウスダスト「1 g」あたりダニアレルゲン「10 µg」 [1〜2 ㎡範囲] (もしくは、ハウスダスト「1 g」あたりダニ「500匹」) |
文部科学省(学校環境衛生基準法) | |
寝具またはカーペットにおいて、「1 ㎡」あたりダニ「100匹」以下 (もしくは、「1 ㎡」あたりダニアレルゲン「2 µg」以下) |
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旧厚生労働省(快適で健康的な住宅に関するガイドライン) | |
布団やカーペットにおいて、 「1 ㎡」あたりダニアレルゲン「1 µg」以下 (もしくは、「1 ㎡」あたりダニ「50匹」以下) |
3.ダニが及ぼすアレルギーの主な症状とは?
皮膚・・・アトピー性皮膚炎
気管支・・・気管支喘息
目・・・アレルギー性結膜炎
鼻・・・アレルギー性鼻炎
3-1.気管支喘息(小児)とは?
生きているダニがアレルギーを起こすのではなく、その死骸や糞が原因であることが分かっています。
死骸や糞は、非常に細かい微粒子になって空気中を舞い、吸い込むと気管支まで到達し、そこでアレルギー反応を引き起こします。
一般の小児と比較して、喘息児ではアレルギー疾患の既往歴(今までにアレルギーになった経験がある)、家族歴(家族にアレルギー歴がある)がある割合が高いとされています。
典型的な喘息発作の症状は、「ヒューヒュー」という笛性喘鳴を伴った呼吸困難が起きます。
息を吐くときが特に苦しく、喘息発作時は呼気性の呼吸困難が主体ですが、症状が進むと吸気性の呼吸困難も合併します。
このような症状が、ダニアレルゲンの吸入などにより反復します。
診断の目安
- 既往歴、家族歴
- あり
- 症状
- 笛性喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)
※参照
⑴小児気管支喘息治療・管理ガイドライン ハンドブック2013ダイジェスト版(日本小児アレルギー学会)
⑵保険所によるアレルギー対応ガイドライン(厚生労働省)
3-2.アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎は、皮膚にかゆみのある湿疹が出たり治ったりを繰り返す疾患で、多くの人は遺伝的になりやすい素質(アトピー素因(※1))を持っています。
かゆみを感じる神経は、皮膚の深いところにある真皮の部分にあります。表皮→真皮 表皮から真皮までをつなぐかゆみ神経とかゆみ神経に隣接する肥満細胞があります。
健康な皮膚は、かゆみ神経が皮膚の深い部分にとどまっています。しかし、アトピーの皮膚の場合、かゆみ神経が皮膚の表面にある表皮の部分にまで伸びて、非常に敏感になってしまいます。
皮膚炎は、顔、首、肘の内側、膝の裏側などによく現れますが、ひどくなると全身に広がります。
軽症では、皮膚が乾燥していてかゆがるだけの症状のこともあるが、掻き壊して悪化すると皮膚がむけて「ジュクジュク」したり、慢性化すると硬く厚い皮膚となり色素沈着を伴ったりすることもあります。
※1 アトピー素因:家族または本人に、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のいずれかがある。または、血液検査で IgE 抗体(※2)が高い。
※2 IgE 抗体:ダニ、ホコリ、食物、花粉などが微量でも人体に入ってきたときに、それらを異物と認識して排除するために免疫反応がおこり、血液中に Ig(免疫グロブリン)E 抗体が作られる。アレルギーの程度が強いほど血液中で高価を示す。
※参照 ⑴保険所によるアレルギー対応ガイドライン(厚生労働省)
3-3.アレルギー性鼻炎とは?
アレルギー反応によって起こる鼻の粘膜の炎症です。
アレルギー性鼻炎は「花粉症(季節性)」が有名ですが、ダニやハウスダストなどのアレルゲンが原因で発症する場合もあります(通年性)。
くしゃみ、鼻水、鼻が詰まる(鼻閉)など、花粉症と同じ症状が見られます。
日本人の5人に1人は、この鼻炎に悩まされているといわれています。
ダニやハウスダスト、花粉などが原因でアレルギー性鼻炎が起こるとされています。
下記の通り2種類のアレルギー性鼻炎があります。
ダニによるアレルギー性鼻炎は、通年性アレルギー性鼻炎となります。
通年性アレルギー性鼻炎はなぜ冬に症状が悪化してしまう理由の1つとして、冬場は暖房で窓を閉め切っているため室内にハウスダストが飛び回ることが原因と言われています。
アレルギー性鼻炎の種類 | 特徴・原因 |
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通年性アレルギー性鼻炎 |
1年を通して存在し、冬に比較的強い症状が出る。 さらさらした水のような鼻水、鼻づまりが繰り返し起こる。 合併症として、ぜんそくやアトピー性皮膚炎が起こることもある。 |
季節性アレルギー性鼻炎 |
一定の季節に限って症状が現れる。 そのほとんどは「花粉症」と呼ばれる。 鼻の症状のほか、目のかゆみ・充血(アレルギー性結膜炎)、のどの違和感、皮膚のかゆみ・湿疹、咳、頭が重たい感じなどの症状が出ることがある。 |
3-4.アレルギー性結膜炎とは?
アレルギー性結膜疾患とは、目に飛び込んだアレルゲンによって、目の粘膜、結膜(しろめ)にアレルギー反応による炎症(結膜炎)が起こり、目のかゆみ、なみだ目、異物感(ごろごろする感じ)、目やになどの特徴的な症状をおこす疾患です。アレルギー性結膜炎の種類は下記のものなどがあげられます。
アレルギー性結膜炎の種類 | 特徴・原因 |
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通年性アレルギー性結膜炎 | ダニやハウスダストなど1年を通して存在するもの |
季節性アレルギー性結膜炎 | 花粉などが原因の、特定の季節にのみ症状があらわれるもの |
※参照
保険所によるアレルギー対応ガイドライン(厚生労働省)
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