「冬」は生き物にとって非常に厳しい季節。

ダニにとってもそれは同様で、「低温」「乾燥」と、ダニの繁殖に大切な2つの条件が好ましくないためです。
ということは、ダニは冬に増えない?それは本当でしょうか?

チリダニやツメダニは「屋内」に潜む生き物です。そのため、外の気温や湿度がそのまま生息環境に当てはまるわけではありません。

今では、「こたつ」や「ホットカーペット」といった部分的な暖房や、「エアコン」や「オイルヒーター」などのお部屋全体を暖める器具が一般的に普及し、 さらには床下暖房などの技術もあります。

そこで、一般的にダニが多い布団環境の冬の温度や湿度の変化を調査し、冬の布団環境でダニが繁殖するかについて、 そして、冬に最も効果が出やすいダニの対策についてお伝えします。

暖房器具や建築素材による温湿度の補完

冬の寝室環境とダニ02-01

技術の発達により、人にとって快適な環境を手軽に実現できるようになりました。

特に冬では、温度を快適に保つためオイルヒーターやエアコン、 今では、床暖房など次々に新しい暖房技術が導入されています。 そのため、『冬でもダニが繁殖するのでは?』と、考えてしまいます。

実のところ、どうなのでしょうか? 湿度においては、ガスストーブやオイルストーブは湿度を上昇させることが報告されています。 一方で、エアコンは使用することでお部屋の湿度は下がります。 しかし、最近は美容・健康に対する意識が向上し、お部屋を乾燥させないためにも、寝室等の一部の部屋で加湿器や加湿機能付き空気清浄機を使う方も増え、 室内の湿度が非常に高く保たれるようになりました。

また、現在は建物の気密性の高さや機能性素材も増えたことから、暖房器具なしで外気温と比較して寝室の温度が5~10℃ぐらい高く維持される建物も多くなりました。

つまり、ご自宅の構造や暖房器具の性能によって異なりますが、こうした技術の普及は人にとって快適な環境を作ると同時に、 ダニの繁殖にとっても快適な環境に近づけてしまうということです。

人の行動による温湿度の補完

冬の寝室環境とダニ03-01

冬場にダニが増える原因は暖房器具以外にもあります。それが『人の活動』

そこで、2017年に弊社社員の布団内部と外の温度/湿度を調査した結果が以下となります。

[ 温度 ]

図1敷布団と外の温度

[ 湿度 ]

図2敷布団と外の湿度

上のグラフが「温度」、下のグラフが湿度で、赤丸が布団内部のデータ、青丸が外(環境)のデータを示しています。

この結果より、「人の睡眠により布団内部の温度と湿度が高くなる」ことが分かります。さらに詳細に見てみると、 この社員の布団環境は、睡眠することで温度が25〜30℃、湿度が70〜80%Rhに保たれており、ダニの繁殖に最適な環境と考えられます。

一方で、起床後には温度が10〜15℃、湿度が50〜60%Rhに16時間程度安定しました。この環境はダニにとっては快適な環境ではありません。 では、1日で快適な環境と快適でない環境がある場合、ダニはどのようになるのでしょうか?

そこで、下記のような実験を行いました。

ダニの生育には不適切な10℃で16時間飼育し、その後、ダニの生育に適切な25℃で8時間飼育するという1日の生活サイクルを10週間続け、ダニの個体数がどのように変動するか調査しました。

図3就寝サイクル

つまり、就寝サイクルで確認された温度を擬似的に再現して、ダニが増えるかを確認したのです。ただ、湿度の調整は難しく、この実験では75%Rhで一定にしました。

図4布団環境のダニ増殖

この結果、「コナヒョウヒダニ」ではダニ匹数は増加しないものの減少もせず、「ヤケヒョウヒダニ」では緩やかではあるものの個体数が増加していました。 つまり、真冬であっても、布団環境によってはダニ死滅せず、場合によっては増殖することが判明しました。

~ コナヒョウヒダニ と ヤケヒョウヒダニ ~
日本に主に生息するチリダニが「コナヒョウヒダニ」と「ヤケヒョウヒダニ」です。どちらのチリダニもアレルギー性疾患の原因になります。 昔はヤケヒョウヒダニの方が多いとされていましたが、今ではコナヒョウヒダニの方が多いとされています。 ヤケヒョウヒダニは低い温度に対する適性が高いため、この調査ではヤケヒョウヒダニは増えることができたと予想されます。

こうした環境補完以外にも、「長期発育休止前若虫」という越冬可能な形態についてもお伝えいたしました。

チリダニの越冬について

このように、ダニは色々な方法で冬を越せる生き物なのです。

冬が効果的なダニ対策とは?

冬の寝室環境とダニ04-01

冬の特徴が「寒く」「乾燥」していること。

そのため、冬が最も効果的になるダニ対策は「部屋の換気」です。

そこで、寝室を換気する際のコツをあなただけにお教えします。
まず、掛布団をはいで、敷布団にも冷たい空気が行き渡るようにしましょう。次に、洋式ベッドであれば時にはマットレスを壁に立てかけて、マットレス下部も効率よく空気を入れ替えできます。 その際に、ホコリなどのハウスダストを掃除機がけで取り除くようにしましょう。和式布団の場合は、敷布団や薄型マットレスを掛けたり干したりすることで、効率よく乾燥させることができます。

こうしたコツは、布団内部のたまった暖気や湿気を、外の空気を利用して効率よく交換するための方法です。 そのため、雨が降っている時は、外の湿度の方が高くなることがあるため、実施には注意が必要です。

また、こうした対策はダニの繁殖を抑えるための方法であり、ダニを直接退治できるわけではありません。 そのため、掃除機がけなどの他のダニ対策も併せて実施することが大切です。

そして、次のシーズンに持ち込まないためにも、年間を通した日頃からのダニ対策が重要なのです。

日革研究所の「ダニ捕りロボ」と「ダニ捕りマット」で、冬のダニ対策に是非ご活用ください。

まとめ

  • 暖房器具によっては温度や湿度が高くなる。
  • 暖房器具は人にとって快適な環境を実現する。それは、ダニにとっても快適な環境を実現。
  • 布団では、人の睡眠行動でダニが増える温湿度が補完される。
  • 冬の寒い時期でも、お部屋の環境によってはダニが増える。
  • 換気によるダニ繁殖抑制効果は、夏よりも冬の方が効果が高い。

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